生きることがへたなあなたへ贈る言葉

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生きることがへたなあなたへ贈る言葉

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2026/08/12 生きることがへたなあなたへ贈る言葉

生きることがへたなあなたへ贈る言葉
            ~著書の「まえがき」より~
 
           はじめに
 
 わたしは、生きることが決して上手な訳ではありません。
むしろ、生きることがへたなために、人はさっと通り過ぎ
てしまう、出来事との出会いひとつひとつに、立ち止まり
足踏みをしながら、一歩前に進むタイミングがやってくる
のをつかむことに、神経をすり減らして生きている人間で
す。
 
 けれど、生きることが不器用だったおかげで、つらい思
いをしたり、苦しんだりしながら、何とかもっと楽に生き
て行くことはできないものかと、自分なりにいろいろ試し
てみることができたような気がします。
 とはいえ、どうしてつらいのか、どこがどうなれば楽に
なれるのか、そんな自問自答を繰り返しながら人生を送っ
ていたわたしにも、とうとう行き詰まりがやってきました。
本当にこれでいいのか、一向に楽にならない自分の人生を
終わりにしたいと思うこともありました。
 「あなたは、もう十分苦しんだ。もう楽になっていいん
だよ」「今のままのあなたでいいのですよ」そう、誰かに
言って欲しくて・・・。言ってくれる人を、探していた時
期もありました。もう十分に努力をしていることを、誰か
に認めて欲しくて・・・。
 
 そんなとき目に止まったのが、カウンセリング講座でし
た。
 カウンセリングに関する様々な理論や技法を学び、体験
を積み重ねることにより、次々とやってくる試練を乗り越
えるために自己流にやってきた方法は、しっかりとした理
論で裏づけされることを知り、大きな安心感となりました。
過去の体験でも、困難な精神状況を乗り越えたときには、
自分のこころの中で、あるいは具体的な行動として、どん
なことを行ったために、その状況が好転して行ったのかを
振り返ってみると、そこには、様々なカウンセリングに関
する理論や技法で説明できる動きがあったことが、よく分
かりました。
 また、新しい気づきもたくさんあり、これはどういう場
面に有効かということが分かってくると、積極的に、自分
の気持ちをコントロールすることができるようになってき
たように思います。
 
 では本書で、カウンセリングに関する理論や技法につい
てお話をしたいのかといいますと、お伝えしたいのはその
内容ではなく「実はわたしの人生を大きく変えたのは、理
論や技法を学び続けた先に訪れた、自分に対する労わりの
気持ちだった」というところです。
 どのようなことが起きたのかと言いますと、様々な理論
や技法を学びますと、自分の考え方の癖や、ついとってし
まう行動のパターンが見えてきます。今は、どういう心理
状態なので苦しいのかも、分かってきます。一方で、どう
すれば楽になれるのかが分かっても、そうできない自分が
いるために、ますます自分を苦しめていることも分かって
きます。ここまでは、理論や技法が大いに役立つところで
す。
 ところが、スポンジに水が染み込むように学び続けたわ
たしの目の前に、ある時大きな壁が立ちはだかりました。
「やはり楽にならない」いつまでたっても「これでよい」
という声が聞こえてこないのです。まだ「これでも苦しみ
方が足りないのか」「結局これがわたしに与えられた運命
なのか」と。
 そう思ったとき、どこまでいっても自分を追いつめてい
る自分に気がつき、愕然としたのです。必死でもがいて溺
れそうになっている自分が見えてきて「これは自分で何と
かしなくては」と思いました。そして両手でそっとすくい
上げながら、「自分を責めないで労わるという手がまだ残
っている」という、発想の転換が起きました。
 ただ生きていくことだけでも努力が必要です。この世に
生れ落ちたその瞬間からあらゆる試練が待ち受けていて、
人生は試行錯誤と選択の連続です。その時にカウンセリン
グの理論や技法を学び体験することは重要ですが、努力し
ている自分を労わることも忘れないようにしたいと感じま
した。すると不思議なことに、自分を追い詰めない実行可
能な新しい目標が見えてきました。

 
 現在わたしは、カウンセラーとして多くの悩める方々に
出会っています。この、生きることがへたなわたしに、果
たしてカウンセラーができるものなのかと、迷ったことも
ありました。けれど、悩んでいらっしゃる方と一緒にいる
と、心の深いところで通じ合える、何か暖かいものを感じ
ることができるのです。この幸せは、きっと、生きること
がへたなわたしだからこそ、プレゼントされたものなのだ
と、この仕事にめぐり逢えたことに、感謝をしています。
 
 わたしたちは人間関係で傷つき「こんな厄介なことさえ
無ければ楽なのに・・・」と思ってしまうことがあります
が、再び傷つかない安心感もまた、やはり人間関係の中で
得られるものなのです。
 わたしも今までに、本当に多くの方々との出会いがあり、
つらい体験も山ほどありながら、人とのつながりの暖かさ
に何度も救われてきました。
 
 この本を書くにあたって、わたしの人生で、今までに出
会うことができたすべての方々に、感謝の気持ちをお伝え
したかったのです。
 そして、この本を今、手にしてくださっているあなたに
感謝を込めて・・・
 
平成十六年七月
 
*令和八年八月加筆
 
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